「昨日まで元気だったのに朝から熱がある」「鼻水が1週間以上続いている」「夜になると咳がひどくなる」——子育て中の保護者の方にとって、こうした症状への対応は日常茶飯事です。
しかし、「すぐに病院へ行くべきか」「様子を見ていいのか」の判断は、経験を積んでいても迷うものです。このコラムでは、子どもに多い発熱・鼻水・咳のそれぞれについて、家庭でできるケアと受診の目安をわかりやすくまとめました。
発熱——体が戦っているサイン
発熱は病気そのものではなく、体が病原体と戦っている反応です。体温が上がることで免疫細胞が活性化し、ウイルスや細菌の増殖を抑えようとしています。つまり、ある程度の発熱は体にとって必要なプロセスです。
年齢別の受診の目安
| 年齢 | 体温の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 生後3か月未満 | 38℃以上 | 昼夜問わずすぐに受診 |
| 生後3〜6か月 | 38℃以上 | 当日中に受診 |
| 6か月〜1歳 | 39℃以上が続く | 翌日までに受診 |
| 1歳以上 | 元気・水分が取れている場合 | 自宅で経過観察も可 |
1歳以上の子どもで39℃台の熱があっても、元気に遊んでいる・水分が取れている・顔色が悪くないのであれば、すぐに受診しなくても問題ないことが多いです。大切なのは「熱の高さ」より「子どもの全体的な様子」です。
すぐに受診すべき発熱のサイン
- ぐったりして反応が鈍い、呼びかけても目を合わせない
- 水分をまったく受け付けない、嘔吐が続いている
- 呼吸が速い・苦しそう・鼻翼がぴくぴく動いている
- 唇や爪が青紫色になっている
- 首が固くて前に曲げられない(髄膜炎の疑い)
- 発疹が突然出てきた
- 熱性けいれんが5分以上続く、または繰り返す
家庭でできる発熱ケア
こまめな水分補給 発熱中は汗や呼吸から水分が失われます。水・麦茶・経口補水液などをこまめに与えましょう。母乳・ミルクは普段通り与えて構いません。 衣類と室温の調整 寒がっているときは薄手のものを1枚追加し、熱がこもってきたら脱がせます。室温は22〜24℃程度を目安に。厚着させすぎると体温がさらに上がります。 解熱剤の使い方 38.5℃以上で明らかにつらそうな場合に使います。熱を下げること自体が目的ではなく、「つらさを和らげて休める状態にする」ための手段です。使いすぎには注意しましょう。 入浴について 38℃以下で本人が元気であれば、短時間のシャワーは問題ありません。高熱でぐったりしているときは、濡れタオルで体を拭く程度にとどめましょう。
鼻水——原因によってケアが変わる
鼻水は子どもに最もよく見られる症状のひとつです。透明でサラサラ、黄色くドロドロ、鼻づまりだけなど、状態によって原因や対処法が変わります。
鼻水の状態と考えられる原因
| 鼻水の状態 | 考えられる原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 透明・サラサラ | 風邪の初期・アレルギー性鼻炎 | 風邪なら2〜3日で変化することが多い |
| 白〜黄色・粘り気あり | 風邪の回復期・副鼻腔炎 | 細菌が増えているサインのことも |
| 緑色・臭いがある | 副鼻腔炎・細菌感染 | 10日以上続く場合は受診を |
| 鼻づまりのみ | アレルギー・空気の乾燥 | 夜間に悪化しやすい |
鼻水ケアのポイント
- 鼻水は無理に何度もかませると粘膜が傷つきます。片方ずつ、そっとかむように教えましょう
- 乳幼児は自分で鼻をかめないため、鼻水吸引器を活用するのがおすすめです
- 室内の乾燥は鼻づまりを悪化させるため、加湿器で湿度50〜60%を保ちましょう
- 鼻水が喉に落ちて咳が出る「後鼻漏」は、頭を少し高くして寝かせると楽になることがあります
受診の目安
- 鼻水・鼻づまりが10日以上改善しない
- 黄緑色の鼻水と発熱が続いている
- 頬や目の周りを痛がる(副鼻腔炎の可能性)
- 毎年同じ季節に繰り返す(アレルギー性鼻炎の可能性)
咳——続く期間と性質で判断する
咳は気道に入った異物や分泌物を外に出すための防御反応です。風邪に伴う一時的なものがほとんどですが、長引く咳や特徴的な咳の場合は注意が必要です。
咳の種類と考えられる疾患
コンコンと乾いた咳が続く 風邪の初期・マイコプラズマ肺炎・百日咳などが考えられます。百日咳は咳き込んだあとに「ヒュー」と息を吸う特徴的な音が出ます。 ゼロゼロした湿った咳 気管支炎・肺炎・RSウイルス感染症などで見られます。乳幼児では重症化しやすいため注意が必要です。 夜間〜早朝に悪化する咳 気管支喘息の特徴的なパターンです。「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)を伴うことがあります。 犬が吠えるような「ケンケン」という咳 クループ症候群(急性喉頭炎)に特徴的な咳です。声がかすれ、夜間に突然悪化することがあります。
咳が出るときの家庭ケア
- 水分をこまめに補給する(喉の粘膜を潤すと咳が和らぎます)
- 室内の乾燥を防ぐ(加湿器・濡れタオルの活用)
- 咳がひどいときは頭と上半身を少し高くして寝かせる
- たばこの煙・香水・ペットの毛など気道を刺激するものを遠ざける
- 市販の咳止めは小児への使用に注意が必要なものがあるため、薬剤師に相談を
すぐに受診すべき咳のサイン
- 呼吸のたびに肋骨の間や鎖骨の上がへこむ(陥没呼吸)
- 呼吸が速い・苦しそうで顔色が悪い
- 唇や爪が青紫色になっている
- 咳き込みで嘔吐を繰り返す
- 2〜3週間以上咳が続いている
保育園・幼稚園への登園の目安
子どもが体調を崩したとき、「いつから登園させていいか」も悩みどころです。施設によってルールが異なりますが、一般的な目安を整理しておきましょう。
主な感染症の出席停止期間
| 感染症 | 出席停止の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| インフルエンザ | 発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日) | 学校保健安全法に基づく基準 |
| 水痘(水ぼうそう) | すべての発疹がかさぶたになるまで | 通常7〜10日程度 |
| 手足口病 | 法的な規定はないが、発熱・口内炎が治まるまで | 施設の方針に従う |
| 風邪(一般的なウイルス性) | 法的な規定なし | 発熱がなく本人が元気なら登園可とする施設が多い |
熱が下がっても「解熱後24時間は様子を見る」という施設が多いです。事前に通っている施設のルールを確認しておくと安心です。
かかりつけ医を持つことの大切さ
子どもの体調は変化が速く、昨日まで軽い鼻水だったのに一晩で中耳炎になっていた、ということも珍しくありません。日頃から同じ医師に診てもらうことで、その子の「いつもの状態」を把握してもらうことができ、変化に気づいてもらいやすくなります。
- ワクチンスケジュールの管理をまとめて相談できる
- 成長・発達の経過を継続して見てもらえる
- 「この症状、受診すべきか」を気軽に相談できる関係が築ける
- 専門的な検査や治療が必要な場合、適切な医療機関へ紹介してもらえる
「大したことないかもしれない」と思っても、気になることは遠慮なく相談してください。それがかかりつけ医の役割です。
まとめ
子どもの発熱・鼻水・咳への対応は、「症状の高さや程度」だけでなく「子ども全体の様子」を見ることが基本です。
- 発熱は体温より「ぐったりしていないか」「水分が取れているか」が判断のカギ
- 鼻水は色と持続期間が受診判断のポイント
- 咳は種類と続く長さ、呼吸の様子に注意する
- 日頃からかかりつけ医を持ち、迷ったら相談できる関係を作っておく